売れる絵本を制作するために考えるべきこと

まずは絵本の制作を楽しむことが大切

世界中の子供たちから大人まで、日常の暮らしの中に息づいているものの一つが絵本ではないでしょうか。日本の子供たちは、日本の絵本作家の作品だけではなく、世界中から選りすぐられた素晴らしい絵本の日本語訳にも接しています。絵本ほど、国境を超えて読まれている書物のスタイルもないでしょう。まだ文字の読めない幼児が、かわいいイラストが多めのお気に入りの絵本を持ってきては、両親に読んでとせがむ姿のかわいさは筆舌に尽くせません。

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絵本の読み聞かせによる育児教育

何度も読み聞かせをしてもらう過程において、文言を暗記して一緒にセリフを口ずさんでいる幼児の姿からは、何と幸せな言語学習であろうかと感嘆すら覚えます。どの子育て中の家庭にも、絵本との微笑ましい思い出は、一冊や二冊にとどまらないでしょう。そんな世界中で、どの年代からも愛されている絵本というジャンルに自分の足跡を残したいという強い気持ちが芽生えたとしても、全く不思議ではありません。中には、プロの絵本作家を志す人もいるでしょう。

絵から入るかストーリーから入るか

一般的に絵本を制作したいという気持ちが生まれる時は、どういうきっかけが多いのでしょう。一つは、イラストを描いていて、とても気に入った作品が生まれた際に、これを絵本に昇華させて残したいと思うパターンがありそうです。実際にプロの絵本作家となった人の中には、美術大学などで絵画を専攻していた人が多いことからも推測されます。美術に携わっていた人が選択する進路にも、美術の教師になったり、ギャラリーで個展を開きながらアーティストとして活動し、商業的な成功を収めるケースもあるなどのさまざまな種類がある中で、絵本作家になるという選択肢には、非常にニッチな印象があります。しかし、プロフェッショナルな作品として販売数を伸ばすことも視野に入れつつ、アーティスととして湧きあがる思いを形にするのに、絵本というジャンルは制作意欲をダイレクトに反映させやすいようです。自分で描いたイラストの印象から生まれた物語のイメージを絵本という形に落とし込み、それが自らが伝えたかったメッセージ性をしっかりと含み、なおかつ世界からも求められているものであるという整合性を取ることは容易ではありません。

逆に、とても強いメッセージを含む物語ありきで、文章の合間を埋めてくれるイラストが加わることで、素晴らしい絵本となるパターンもあるでしょう。絵本ならではの要素の一つとして、とても風変わりであったり、理由は分からないけど思わず口ずさんでしまうフレーズやリズムが印象に残る作品が多いことに気付きます。例えば、ポカンポカンという言葉の繰り返しが雨の音を表現していて、それを読んだ親子が「雨は確かに時々そういう風に降るね」と感想を言い合うのも、まさに絵本だけの読後感と言えます。シトシトではなく、ポカンポカンと降る雨を表現できるイラストが、さらにストーリーの説得力を高める役目を果たした時、また一つ名作と呼ばれる絵本が誕生するのでしょう。言葉を操る絵本作家が、小説ではなく絵本を選ぶ理由は、まさにこの絵本からしか生まれ得ない印象を追い求めているのでしょう。

出版社から絵本を出版するということ

このようなきっかけから絵本を制作したいという欲求が湧いた時、ストーリーとイラストの両方とも著者が自ら創造し得る場合、それを実際に絵本という形に昇華させて作品として仕上げるには自費出版という形式もあります。費用は全額自費での負担ですが、誰からの制約も受けず、本当に自分が作成したいそのままでの出版が可能である反面、それを商業的にヒットさせて広く流通に乗せることは難しいでしょう。

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プロの絵本作家としてデビューするには

プロの絵本作家として出版するからには、世間にも広く認知してもらいたいし、商業的にも成功したいという強い気持ちがあるのなら、やはりプロフェッショナルである出版社から出版する道こそが王道でしょう。著者が絵本のアイデアを完成させて出版社に持ち込み、自信満々に出版を打診したとしても、ほぼ全てが門前払いの憂き目にあうはずです。現実の世界では、それほど自分が作りたい作品と売れる作品との乖離は大きいということなのでしょう。そこで、絵本作家を志す人は、出版社などが主催する絵本の企画に関するコンテストに応募することが多いようです。

このコンテストで優秀な評価を得てはじめて、自分の絵本作品が世に出られるかもしれないという可能性が生まれます。プロフェッショナルとしてのさまざまな視点から出版社が作家に売れるためのアドバイスを行い、推敲と修正を重ねながら、最終的な仕上がりを検討していく作業をなくして、その絵本作家の個性や独特の世界観は簡単には生まれないのでしょう。時には、絵本の主人公であるキャラクターにすら、変更や修正が求められる事態もあり得るでしょう。著者からすれば、思い入れのあるキャラクターであればあるほど、そうしたアドバイスを受け入れることは難しいことであるはずです。

絵本出版の構想が固まったら

そうした多くの重要なアドバイスを経て、出版社と正式に作品を出版する話がまとまれば、イラストの原画の制作開始です。世界中に数多く存在する名作の絵本がライバルになるわけですから、よほど独自の作家性や世界観がなければ、人の目に触れることも難しいでしょうから、絵本の制作過程でも群を抜いて重要なパートが早速訪れます。

実際に原画が完成したら出版社に送り、その時点でデジタル化されます。パソコン上でイラストに実際に文字を挿入し、より絵本の体裁に近づきます。フォントの種類や文字の大きさ、どのイラストのどのページに、どこまで文章を区切って当てはめるかによって、絵本の読みやすさや印象が左右されます。さらに著者がイメージしている色味と合致しているかなど、画像修正ソフトを使用して最終的な仕上がりに修正されます。その後も、紙質を選んだり、絵本のサイズや厚みを決めたり、ハードカバーにするのかソフトカバーにするのかを選んだり、基本的な仕様を決めます。さらに、絵本を印刷する工程上で気をつけなければならないポイントも、事前にしっかりと話し合いが持たれます。そして何度か印刷のテストが行われて最終的なチェックが終わるまでに、作品によりますが1年以上かかることもある中、その絵本作品はようやく印刷されて納品されるのです。

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