子供の頃から親しんできた絵本
誰もが、自分のお気に入りの一冊があるのではないでしょうか。絵本というジャンルには独特の魅力があり、その世界観に魅入られた人々に、自分もオリジナルの絵本をつくってみたいと思わせる影響力を有しています。
実際に、その具体的な構想を育む人は多く、自費出版で形にするケースも数多く見られます。
大まかな『3つ』の工程
潜在的に同じような夢を抱いてはいるものの、実際にどのような作業を行うのかという具体例までは知られていないかもしれません。絵本を実際に作成するために必要な工程は、大きく分けると「取り掛かるまでの準備作業」、「レイアウト作成から清書まで」、「最終データ作成」の三工程にまとめられるでしょう。
取り掛かるまでの準備作業
まずは、どのような絵本にするかというコンセプトをまとめてから、タイトルを決め、ストーリーの起承転結を構成し、どのようなイラストを挿絵とするのかなど、絵本全体の設計図を描く必要があります。ストーリーは、想定している読者は大人なのか子供なのか、また子供であれば何歳の子供を想定するのかによって、どんなストーリーをおもしろいと感じるかや、どのレベルの言葉を使えば理解してもらえるかなど、さまざまな注意事項も決まってくるでしょう。
独りよがりに作って終わりではなく、読者がおもしろいと喜んでくれる、または感動してくれるといった感情を揺さぶるものでなくては、制作意図が半減してしまいます。大切なことは、細切れの状態であるアイデアたちをまとめ上げて一つの形に集約させることです。そのためには、まず頭の中にある絵本を構成するために必要な言葉を紡いでいきましょう。
断片的であっても、ストーリーに欠かせない言葉を集め、書き出していく作業を経ていく中で、最終的に残すべき言葉だけが残っていくことでしょう。大まかなストーリーの起承転結が決まったら、それを台割表と呼ばれる形式に落とし込む必要があります。これは、簡単に言えば絵本の何ページ目にストーリーのどの部分を収めるのか、そしてイラストは入れるのか入れないのかなどを決める表のことであり、これを制作するための計画を練るタスクが必要です。
絵本の基本「4の倍数」を押さえておこう!
また、絵本を作成する上で、一般的にはページ数は4の倍数が好ましいとされていますので、最後のページに入れる奥付なども考慮しながら全体像を決めましょう。
また絵本をどのように綴じるのか、白黒なのかカラーなのか、見返しはつけるのか、つけるのであれば何か工夫を施すのか、表面にはPP加工を施して光沢感と保存性を高めるのかなど、その外見を含めた製本の仕方についても計画を練りましょう。
レイアウト作成から清書まで
台割表の構想がまとまれば、実際にストーリーとイラストのラフ画をページごとに割り付ける作業を行います。ストーリーには起承転結であれば転に当たる山場となる場面があるはずです。そのクライマックスを盛り上げるために、大きなイラストを使って見開きの2ページを使用して構成するなど、具体的なレイアウト作業を行います。
その際には、製本される場合に内側に折り込まれる部分も意識して、ページをまたぐようなイラストでは、キャラクターの顔や主要なアイテムなどを中央部分に配置しないなどの配慮も必要です。また、ページ数が多くなればなるほど費用もかさんでいきますので、余白が多すぎるデザインであったり、大きなイラストを使いたいあまりに1ページの文字数が少なくなり、結果的にページ数が増大すれば、それだけ制作費が大きくなります。
自分の予算とも相談してレイアウトを行う必要も生じます。さらに費用の面では、絵本の仕上がりのサイズも影響してきますので、作品の雰囲気と絵本としてのサイズ感が合致するように、予算と折り合いをつけましょう。
そして、よくあるケースとして、ストーリーの創作は得意だけれども画を描くのが苦手というタイプの人もいれば、画のイメージはハッキリとあるものの、お話としてのまとまりをつけるのに苦戦しているというタイプの人もいます。絵本の構成要素のどちらか一方にのみ特化している場合です。こうした人は、自分が不得意とするパートを、外注することも可能です。
ストーリーはしっかりと出来上がっているのに、絵本の印象を決めるイラストを描くのが苦手でどうしてもうまく描けないという場合は、プロの絵本作家やフリーランスのイラストレーターにイラスト制作部分を外注すればよいのです。反対に、絵本を制作したいと思ったきっかけとなるイラストは出来ているものの、ストーリーの起承転結を考えるのに苦労している場合は、絵本を出版している会社の編集者に協力を依頼することも可能です。もちろん費用はかさみますが、一つの方法論として活用できるでしょう。絵本の顔となる表紙も、自分で描けない場合には、プロフェッショナルに外注するのも一つのアイデアです。
最終データ作成
最後に、形になった絵本のデータを、入稿規定に従った完全データとして準備します。印刷会社の仕様に合わせて、通常は特定のイラスト作成ツールや画像編集ソフトを用いて作成したデータをPDF形式の高画質印刷指定で保存して入稿するパターンが多いはずです。
その際には、製本時に裁ち落としされる上下左右3㎜ほどのトンボと呼ばれる余白も確保する必要があります。絵本の文字としてのフォントは、誤字や脱字がないかの校正をしっかりと行い、文字化けやレイアウト崩れを防ぐためにアウトライン化されているかも確認されます。アウトライン化されるともう文字としての修正は不可となりますので、必ず前のデータも保存しておきましょう。
イラストの画像データは、印刷後に色合いが異なっていることを防ぐために、データのカラーモードをRGBではなくCMYKデータである必要があります。ここを見落としてしまうと、自分のイメージとは色合いの異なる絵本になってしまい、生まれた子供との初対面であるかのような印刷後の製本を手にした際、非常にがっかりする羽目になることも予想されるので、印刷会社とも相談しながら、適切なカラーモードでの入稿を心がけましょう。
また完全データを作成する前に、使用している各種ソフトウエアのバージョンが古すぎて対応していませんというリスクを避けるためにも、印刷会社が指定するものと一致しているかの事前確認も必須です。
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