【絵本の自費出版】5つの注意すべきポイント
1.出版業界の相場からコスパを考える
2.どんな費用が発生するのかを知る
3.絵本を出版する目的を明確にする
4.自分に合った出版社を選ぶ
5.自費出版で事前に準備しておくもの
1.絵本の自費出版の費用(目安・相場)
絵本の自費出版の費用はピンキリなので、もし「ハードカバー」にするなら100万円~250万円くらいは準備しておく必要があります。しかし、並製本であれば、その【半分以下で出版が可能】です。
<絵本をつくる際に変動する費用>
・ハードカバーにするかどうか?
・表紙や本文の紙質は?
・何部つくるか?
・どのような販売ルートを使うか?
なんとなくの目安として、ハードカバーにすることで「50~100万円」の費用が変動し、本文にも厚めの紙を使えば「5~10万円」くらいの変動があると思ってください。
部数は各出版社によって異なりますが、最小で100部(それ以下でも可能だが製造面からみてコスパが良い)となります。そしてハードカバーの絵本は「通常の書籍」に比べると、部数が増えたときの費用の増加率も大きくなってしまいます。
絵本の販売ルートも費用に影響します。ただし、無名の絵本作家が書店に並べても見向きもされないのが現実なので、基本は「ネット販売」にすることで費用を抑える方が良いでしょう。
※書店に並べるだけで20~100万円くらいが必要になりますが、それらは売れない場合には破棄されたり、著者負担の在庫となるので【結果的に無駄な費用】となります。
2.自費出版で必要な経費について
文・絵の編集費用
<原稿の編集>
文章(原稿)に関して、仮に著者が完成していると思った作品でも、プロの目線からすれば「仕上げが甘い」ということが多いです。もちろん、著者の個性とも言える部分かもしれませんので、変更するかどうかは著者次第です。
ただし、最低限のアドバイスや助言がもらえる出版社でなければ、ただ印刷(製本)するだけの関係性となって終わってしまいます。
せっかく出版社を通じて「商業出版」するのであれば、プロの指摘(アドバイス)を受けながら作品のクオリティを高めていくことをオススメします。
<イラスト製作>
-イラストを描ける人
現状のイラストで良いのかプロの意見を聞いてみましょう。ちょっとした修正でシーンが分かりやすくなったり、表現力が高まったりすることも多々あります。
手書きの方は修正が難しいと思いますが、デジタルで描いている方はぜひクオリティアップに挑戦してください。絵本を購入する読者のためにも、著者が努力を怠ってはいけません。
-イラストを描けない人
出版社経由でイラストレーターに依頼することが可能ですが、専属のプロの絵描きになると高額になってしまいます。個人をつなぐネットサービスなどで探した方が良いかもしれません。
正直、近年のアマプロの方たちの技術もかなり高いので、高額なプロと大差はありません。もちろん、過去の実績による『経験値』は大きく違います。著者本人の絵本のテーマや伝えたいイラストが固まっていれば、そのイメージを正しく伝えることでコストも抑えることが可能です。価格の相場としては【1枚あたり3000円~1万円】くらいでしょう。
紙・材料(オンデマンド出版では不要)
<表紙>
いわゆる「ハードカバー」にすると価格は一気に跳ね上がります。ハードカバーの書籍は作業工程が多いため、単純な材料費だけではなく、実際に作業を行う人件費などが加算されていきます。
この費用は誰が負担するのかと言えば、著者は当然ながら、読者にも負担が行きます。どうしてもハードカバーの絵本は販売価格も高くなりますので、それを買う読者(購入者)の負担も増えてしまいます。
<本文>
絵本は「子ども」が読むので丈夫な方が良いと思う方も多いでしょう。しかし、そうとは限りません。例えば、絵本のターゲットが『小学生の低学年』くらいであれば通常の書籍と同じ紙質でも問題ないでしょう。
絵本の自費出版においてのコストは「読者の購入費用」にも影響することが多いので、必要最低限の紙質があれば製品としてのクオリティは維持できます。
印刷費(オンデマンド出版では不要)
絵本の場合、ほとんどがカラー印刷になりますが、その印刷費用は「カラーページ」が何ページあるかによって費用が変動します。
当然ながら、モノクロの絵本はカラーページがありませんので印刷費用は抑えられます。しかし、ターゲット層に合っているかは再検討する必要があるでしょう。
※最初から狙ってモノクロにする以外で、わざわざモノクロ絵本にするメリットはありません。
諸費用
<契約に関する費用>
特に目に見えて必要な費用ではありません。事務的な処理(作業)として全体の費用に含まれています。自費出版では「見積もり」に含まれている内容や「支払い方法」などをしっかりとチェックしておきましょう。
<宣伝に関する費用>
宣伝活動に関しては出版社によって異なりますが、ほとんどの場合、基本的なPR(プレスリリース)以外は費用に含まれていません。それさえもしていない出版社もあります。各種メディアへのアプローチなどで費用が発生する場合には注意してください。ほとんどの場合、無名の絵本作家の作品がお金を支払うだけで日の目を見るほどの効果はありません。
<書店への配本費用>【要注意!】
書店に配本をするという出版社の場合、それは単なる「場所買い」によるものです。しかも期間限定となるため、2~3週間もすれば店頭からは消えてしまいます。しかし、その「ただ置いてもらう」費用というのが高額になっているため、無駄な費用を著者が負担していることになります。当然、あとから購入者が欲しいと思ったときに「書店にはない」という状況もあります。
3.絵本を出版する目的を明確にする
絵本を自費出版することは難しくはありません。基本的には「自費出版の費用」さえ工面できれば出版自体は可能になります。
しかし、あなた自身が絵本を出版して「どうなりたいのか」を考えておくべきであり、その目的を達成できる出版サービスを選択して利用すべきでしょう。
<絵本作家として活躍したい>
正直、無名の絵本作家が日の目を見ることは現実的ではありません。まずは『実績作り』というイメージで出版することをオススメします。
実際に作品を世に出すことで、世間の反応なども見えてくるので、次の作品つくりで活かせます。また次の出版社への持ち込みのアピール材料にもなるでしょう。
<自分の作品を読んでもらいたい>
おそらく、絵本の自費出版を考えている方のほとんどは「作品を見てもらいたい」という点になると思います。その作品が実際に面白いかどうかは分かりませんが、商業出版して読者に確認(評価)してもらうことは重要です。ご自身の評価以上のお褒めの言葉をもらったり、意外なポイントが評価されたりすることがあります。
もし絵本を出版しなければ評価を得られることはないので、自己満足の世界で終わってしまうかもしれません。せっかくなので【他者の評価】をもらいましょう。
<個人的な「おもいで」として残したい>
もし絵本(作品)の内容に自信がないのであれば、商業出版ではなく『記念品』として残すのが良いでしょう。家族や親族で楽しむ程度であれば、そこまで材質(紙質)にこだわる必要もありません。まずは無理をしない程度の予算を考えてみてください。
いわゆる「商業出版」ではなく製本(絵本の形にする)ということであれば、出版社よりも印刷所へ直接持って行った方が割安で絵本を作れます。
4.自分のタイプや実力に合った出版社を検討
絵本を自費出版するにあたり、その費用も重要ですが、どの出版社を利用するかも問題になります。なぜなら、費用だけで見ると「専門的な部分」が多く分からないからです。
ご自身の実力に合ったサービスを利用しなければ、満足できる絵本は完成しないでしょう。以下のようなパターンで、どのような出版社を探せばよいかを考えてみてください。
<絵も文章も自分一人で作れる>
文章(物語)も書けるし、絵(イラスト)を描けるという方は、まずは「自分なり」に仕上げてからプロにチェックしてもらいましょう。そのまま出版できるレベルにあるかどうか、第三者(プロ)の意見をもらうことが大切です。
自費出版の場合の「出版社側のスタンス」は、少し微妙な位置にあります。自費出版であれば、出版社側の利益は確保されている場合が多いので、作品のクオリティに関しては【口出しをしない】という会社もあります。
あなたが作品に関してのアドバイスが欲しいのであれば、そのような積極的に作品を良くしてくれる出版社を選ぶべきです。最初のコンタクトの段階で先方に確認しておきましょう。
また後からの修正を考えると、やはり手書きではなくデジタルで描けた方が便利です。
<絵(イラスト)は描けない>
絵が描けなくても絵本を自費出版することはできます。むしろ、自費出版でなければ難しいです。ストーリーだけ作れる絵本作家(新人)というのは需要がありません。
実際の出版に向けて、イラストレーターを使っていることになりますが、出版社の専属プロは高額にになる可能性が高いです。おそらく安く見積もっても1枚あたり1万円くらいするでしょう。
もし15枚のイラストなら「15万円」となり、見開きで1枚の場合には2ページ換算になるので倍の金額になります。
つまり、絵本の出版費用とは別に【イラスト費用】がかなりの負担となってくるでしょう。
可能であれば出版社経由の紹介ではなく、著者自身で探すのが良いと思います。アマプロが集まっている(仕事を受けている)サイトなどを利用してください。費用的には「半分から1/3程度」で抑えることが出来ると思います。
<文章(物語)に自信がない>
これはプロに助言(アドバイス)を求めてください。絵本の自費出版を行う出版社のなかには「助言」ができないところも多いです。それらは基本が「印刷所」あがりの出版社で、作品のクオリティを高める技術がありません。
子ども向けの絵本であるからこそ、しっかりしたクオリティを維持する必要があります。良くも悪くも「素直な反応」をみせる子どもたちに読んでもらうためには作品に妥協をしてはいけません。
どのような視点をもって絵本をつくっていくのか、どのような作品にしていくのか、それらを出版社の担当者と共有する必要があります。
まず出版社へアプローチする段階で「どこまで」関わってくれるのかを確認しておくのが良いでしょう。物語(ストーリー)やイラストにアドバイスはもらえるのか、その他の修正などは可能かなども聞いておきましょう。
<イラストに自信がない(構成を活かす)>
商業出版としての「絵本」であれば、イラストのクオリティは重要です。できないことはプロ(アマプロ)に任せてしまいましょう。
何となくイメージは書けるという人は、そのイメージ(キャラやモノの配置)を形にしてください。それを基にイラストを描いてもらえばよいだけです。
イラストの配置や構成を提示するだけで、著者の求めるイメージにかなり近い仕上がりになります。またキャラクターデザインなども提出してもらっておけば、自分でもイメージしやすいです。一般ユーザーが購入することになる『商業出版』においては、できないことは「できる人」に任せるべきです。それは絵本(作品)のためであり、読者のためにもなります。よりクオリティの高い作品を目指してください。
5.絵本の自費出版で事前に準備しておくもの
<費用>
書店に並べたい(配本)のであれば、最低でも【50万円】は必要でしょう。その場合の部数は「数百部」と少ないので、あまり意味のない出版になるかもしれません。本気で多くの書店に並べたいのであれば【100万円~250万円】くらいが目安になります。
すでにお伝えしたように、期間限定での「場所買い」になるため、その一定期間で人気が出なければ廃棄(もしくは在庫処理)されるでしょう。
つまり、大金をかけても売れないものは売れないし、それらが廃棄されてしまえば「売れたかどうか」も分かりません。実際に報告数と販売数は異なることがほとんどです。
オンデマンド出版(受注生産方式)であれば、在庫の概念がありません。無駄な費用を抑えることができるので【10~50万円】程度で商業出版ができます。
ただし、先ほどの「印刷所」あがりの出版社でアドバイスがもらえなかったり、作品のクオリティを考えない出版を行う会社もありますので注意が必要です。
ただ自費出版の費用を抑えればよいわけではなく、「一般ユーザーが購入する絵本」を出版するにふさわしい出版社を探していきましょう。
<文字原稿>
基本的に「文字原稿」と「イラスト」は別々のデータで用意しておきましょう。
書籍のデータは少しクセがあり、専用のデータとして処理をしなければいけません。最初から文字とイラストを合わせてしまっていると(最悪の場合ですが)出版できないこともあります。
文字原稿は「メモ帳」や「ワード(word)」など、いわゆるテキストデータでやりとりとなります。もし手書き原稿しか持っていなければ、事前にデータ入力しておきましょう。
データでない(手書き)場合には、データの入力費用(高くはないですが)などが必要になることがあります。事前に自分でできることはやっておきましょう。
出版社とスムーズなやりとりを行える著者であることは重要です。もしかしたら、あなたの才能に気づいた出版社から「自費出版」ではなく、著者負担のない出版を持ちかけられるかもしれません。このようなスムーズな作業という視点から言えば、助言などを素直に受け入れる姿勢(気持ち)も大切かもしれません。もちろん、ゆずれない部分まで修正する必要はありませんが、プロの目線を活用することが大切です。
<イラスト(構成程度)>
基本的には「完成したイラスト」があれば、それを利用していきます。デジタルであれば修正しやすいのでベストですが、手書きの場合は印刷に支障がなければ問題ないと思います。
出版に支障のあるイラストとは「印刷範囲に収まらない」場合がほとんどです。基本的に表現の規制というのは少ないですが、その絵本のターゲットによっては検討の余地があるかもしれません。
著者がイラストを描ける人であれば、プロの助言を受けて修正することをオススメします。実際に購入するユーザー(読者)に恥ずかしくない絵本を作ってください。
素人が作った絵本だとしても、購入者にとっては関係ありません。一つの作品を購入する人たちの気持ちを考えれば、その楽しみにしていた気持ちを裏切らないような最低限の努力が必要です。
事前準備としては、可能なら「修正できるデータ」にしておくことをオススメします。
<著作権の確認など>
例えば、文字原稿の作成者とイラストを描いた人が異なる場合、著作権はそれぞれにあります。今回のような自費出版であっても、相手に了承を得ておく必要があります。
他にも、何かをモチーフにした絵本の場合に、その基になったモノの著作権や商標権などもチェックが必要になるでしょう。
それらは基本的に「著者がクリアにする必要」があります。わざわざ出版社が介入してクリアにしてくれることはありません。おそらく契約上も出版社側に責任が降りかからないようになっています。もし、ご自身で判断がつかない場合には、事前に出版社側に「何か著作権にひっかかる部分はないですか」という確認をしておきましょう。
それでも著者に責任があることは変わりませんが、そのような事前チェックをしてもらうことで予想外のリスクを回避することにつながります。
絵本の自費出版に関する費用まとめ
絵本の自費出版は【目的】を明確にして、それに見合った予算と【出版社】を選ぶことが大切です。ハードカバーよりも並製本の絵本であれば費用を【半額以下】に抑えられます。
また自費出版の費用が高くなるということは、読者が購入する価格も高くなるということを認識しておく必要があります。著者が負担する【自費出版の費用を抑える】ことで、著者にも読者にもメリットがあるということです。
また読者のことを考えると【クオリティ】を高める必要があるため、プロの【アドバイス】がもらえる出版サービスを利用することが大切です。
あなたの【自己満足】で終わらないような絵本つくりをしてください。そして、ちゃんとした【商業出版】の絵本として読者が納得できるような作品を目指しましょう。