絵本の自費出版の相場が見えてくる業界情報まとめ

この記事では『絵本の自費出版の相場』を探っていきたいと思いますが、絵本の素材や作り方によっても大きく変動していくことは認識しておいてください。実際に絵本の自費出版を考えていくうえで大切なこともお伝えします。

また2つの視点から絵本作りの相場を考えていきたいと思います。基本的には「製造コスト」と「それ以外のコスト」を分けて考えることで、本当に必要な費用(相場)が見えてくると思います。今後の自費出版の参考にしていただければ幸いです。

「製造コスト」と「それ以外のコスト」について

絵本の自費出版を検討している方たちは、すでにネットなどで情報を集めていると思います。その結果、「絵本の自費出版は高額だな」という印象を持っているはずです。そうです。絵本を商業出版(一般ユーザーが購入できる出版)するには高額な費用が必要です。

おそらく、皆さんの相場のイメージで言えば【150万~250万円】くらいかなと思います。単純に言えば、その認識で間違いありませんが、そこにどのようなコストが含まれているのかはご存じでしょうか?

ここでは「製造コスト」と「それ以外のコスト」について詳しく見ていきたいと思います。もしかしたら、あなたの絵本出版の目的によっては不要なものがあるかもしれません。自分の目的に合った絵本つくりを選択してください。

<製造コスト>

・ハードカバー
絵本の自費出版が高額になってしまう理由のひとつです。ハードカバーの絵本は「規格外の書籍」のため、機械的な製造が難しくなります。出版社にもよりますが、その多くは職人が手作りしている状況です。そもそもの販売部数が少ないので、専用の製造ラインを作るまでには至りません。これが通常の書籍の自費出版より相場を高めてしまっています。

・本文の紙質
絵本は比較的「通常書籍より丈夫な紙」が使われがちです。理由は子どもが扱うため強度を高めるためと、ほとんどがカラー印刷なのでインクが裏に浸透(透けて見える)しないようにするためです。ただし、あまり強度だけを考えると分厚い絵本になって扱いにくいものになります。これは絵本として成立する最低限の紙質で十分です。

・カラーページ数
印刷においてモノクロとカラーの頁では単価が大きく変わります。絵本は基本的にイラストが挿入されているためカラーページが増えてしまいます。例えば、32ページすべてをカラーにするのと、半分の16ページでは1冊の単価(コスト)も50~100円くらい変わります。これは絵本の構成を考える際に、どのようなページ構成にするかを事前に検討する必要があります。

<それ以外のコスト>

・各種管理費
営業および編集には出版社の担当者が存在します。まあ個人的には「営業」に関しては無駄な費用を抑えられると思っていますが、一般的な絵本の出版社ではかなりの「営業経費」を使っています。その分が著者の負担に上乗せされている状況です。編集に関しては、プロのアドバイスを活用できるので、著者にとっては『メリットのあるコスト』だと思います。

・配本費用
こちらも絵本の出版(相場)が高額になってしまう理由です。絵本を書店に並べたい場合、かなりの費用が必要になります。それは自費出版の費用に含まれているため、全体的な相場が高くなってしまうのです。いわゆる「場所買い」ですが、出版社は絵本を置くスペースを買い取っています。自費出版の絵本ならではの無駄なコストとも言えるかもしれません。
※ちなみに、この場所買いをしたとしても数週間で契約は切れて、絵本は廃棄されたり在庫となってしまいます。無名の新人作家の絵本は売れにくいため、ほとんどが売れ残って書店から消えてしまいます。

今回まとめたものは相場に大きく影響する費用です。そのため、各出版社によって細かな違いはあると思います。その名称なども異なるため、不明な費用などがあれば見積書などを見ながら担当者に確認してみてください。

絵本の自費出版の相場を見ていこう!

<某出版社:250万円>

例えば『絵本のコンテスト』をして顧客を集め、その人たちに自費出版の営業をかけている会社の相場は【250万円】くらいからスタートして、最安値で【75万円】くらいまで下がっていくそうです。
自費出版の費用が安くなると言っても条件が当然に悪くなるだけです。まず部数が大幅に減ってしまいますから、配本される店舗数も限られます。本当に出版する価値があるのか疑問に感じる方も多いようです。
個人的には「コンテスト」を目的として集まった人たちに営業(勧誘)をしてしまうという姿勢が問題(法律すれすれ)のような気がしますので、あまり関わらない方が良いかなと思います。

<某印刷会社:50万円>

もともとが印刷メインの出版社があります。この場合、書店に並べる場合には別途費用が必要になるパターンが多いです。もしくは少部数(100~200部)で少数の地域書店に並べるということもあります。このような少部数では全国的に配布はできませんので、皆さんが思っているような「書店に並べたい」という希望は叶わないでしょう。

絵本つくりで大切なこと

<あなたの出版する目的>

あなたが出版したいと思った目的を明確にしていきましょう。
「絵本作家として活躍したい」「読者に読んでもらいたい」
「ただ作品を残したい」「見た目の良い絵本を作りたい」など

その目的によって、何が必要で何が不要なのかがわかります。つまり、無駄なコストを削減することができるので、どの出版社を選べば良いのかも見えてきます。失敗しない絵本の自費出版を選択することで、満足度の高い絵本が完成します。

<なぜハードカバーにこだわるのか?>

絵本はハードカバーだよね、という固定概念を捨ててしまいましょう。なぜ、そう思ってしまっているのでしょうか?それは書店に並んでいる絵本のほとんどがハードカバーだからではないでしょうか?あなたの絵本のターゲットは誰でしょう。仮に、モノを大切に扱える年齢であれば、ハードカバーにする必要はありません。

ハードカバーにした方が良いのは文字が読めない乳幼児くらいで『オノマトペが多い絵本』です。しっかりとストーリーを楽しんでもらいたいのであれば、通常の並製本で十分だと言うことになります。あなたの目的やターゲットに合わせた絵本を作れば自費出版の費用も抑えられます。

<誰のための絵本なのか?>

そもそも論になるかもしれません。あなたの出版したい絵本は「誰」のための絵本でしょう。もし個人的に残したいだけなら「出版」ではなく、単なる「製本」で良いわけです。一般ユーザーが購入する『商業出版』となれば、そこには『読者』が存在することになります。

つまり、読者にとってメリットの高い絵本をつくる必要があります。もちろん、作品の質は重要ですが、読者側からすれば「価格」もメリットの一つとなります。自費出版の費用が高いということは、その分が絵本の価格に反映されてしまうということ。読者の負担につながります。

書店に並べない絵本出版もあり!

先ほどもお伝えした通り、無名の絵本作家の作品が書店に並んでいても売れる可能性は少ないです。確かに誰かの目にふれるチャンスは増えますが、実際には他の書籍と比較されてしまうのです。そうなると、価格的に抑えられて製造できる「売れる有名な作家の絵本」の方が選ばれます。

絵本は消費者にとっても『高額な商品』です。出版社が売れると思って作られた絵本は、大量生産によって販売価格を抑えることができるのです。しかし、絵本の自費出版に関しては、そのような状況は生まれませんので、通常の絵本と同額がそれ以上の高額になってしまいます。

さらには期間限定の『場所買い』によって並べられた絵本には寿命があります。数週間、下手すれば数日で店頭から消えてしまいます。もちろん、場所買いの費用は自費出版の費用(相場)に含まれていますので、あなたが負担していることをお忘れなく。

本当に書店に並べるという選択は必須なのでしょうか?それは単なる『自己満足』ではないのかと、今一度ご自身で考えてみてください。書店に並べるのは誰でも「お金さえ払えば」できてしまうのです。その自己満足のために場所買いの費用を、著者が負担して、さらには読者にも負担させて良いのでしょうか?

商業出版ではない絵本製作もあり!

もし「ただ作品としての残したい」のであれば、出版ではなく「製本のみ」をオススメします。この場合、出版社ではなく印刷所を使うことでコストをかなり抑えられます。おそらく100~200部くらいであれば【20~30万】程度で製本が可能でしょう。

ただし、絵本のクオリティに関して助言をしてくれることはありません。今ある作品をそのまま印刷してくのが基本となります。なぜなら印刷所には『出版(編集)のプロ』が存在しません。今以上の作品を求めるのであれば、絵本を扱える出版社を選ぶしかないでしょう。

製本メインでつくった絵本の活用方法は、ご自身の身内に配布するだけではありません。地域の図書館や児童施設などに寄贈することもできます。実際に寄贈された経験のある方たちに聞くと、寄贈先から感謝の言葉などが届くことが多いです。

寄贈する場合、単なる製本の絵本よりも『商業出版』の絵本の方が受け入れてもらいやすいと思います。ただ個人でつくった絵本よりも『一般流通している絵本』の方が評価が高いと感じてもらえます。単純なところで言えば、書籍コードISBNや販売価格が付与されているかで判断されやすいです。

そのなかでも学校関連(幼稚園・保育園・小学校・中学校など)は闇雲に送ってはいけません。図書館には棚数(本が置けるスペース)に限りがあります。例えば、その地域に合った特性や関連のある絵本が好ましいです。まったく関係ないものだと迷惑になるかもしれません。

どこに寄贈するかなども出版社の担当者に相談してみるのも良いでしょう。ちゃんとした担当者であればポイントくらいは教えてくれると思います。場合によっては、送付状の書き方や送る際の注意点などもアドバイスがもらえることもあります。

絵本が出版できる業者を選ぶ際の注意点

先の「出版社」にするか「印刷所」を選ぶかは、あなたの『絵本を出版する目的』によって変わると思います。そして、業界的な相場を考えても、基本的に自費出版は安いものではありません。あなたの絵本に必要なものに絞っていくことで費用を抑える方法を考えてみてください。

そして価格が「自費出版の相場を超えていないか」もしくは「コスパは良いのか」という点を合わせて検討していきましょう。無理して自分の予算を超えるような自費出版はオススメしません。絵本は作家も読者も楽しめるエンターテインメントであるべきだと思います。

さらに出版社を選ぶ場合に『アドバイス』がもらえるかも大切なポイントです。プロの視点から見て作品の状態を判断してもらい、作品のクオリティを高めるようにしてください。自己満足の絵本ではなく、読者のためにも最低限のブラッシュアップが必要です。

よくある自費出版での失敗談があります。高額な費用を支払ったのに、店舗には短期間しか置かれず、報告された売上部数のわりに何の反響ももらえない、さらには今でも在庫を抱えて悩んでいるという方もいらっしゃるようです。

それは何がいけなかったのでしょうか?大切なのは『自費出版に関する知識』を持つことであり、それを活かして業者選びをすることです。出版社はさまざま、印刷所もさまざま、それらが「あなたの目的」に合うかどうかをチェックすれば失敗する確率を減らせるでしょう。

絵本の自費出版に関する相場情報のまとめ

絵本出版の相場を見ていくことで何がポイントなのか見えてきたと思います。これから自費出版を検討するのであれば、まずは『知識』を持つことです。そして、あなたの『目的』を明確にすることです。それが満足度の高い出版を行うためのスタート地点になります。

実際のところ、絵本つくりは楽しいものです。物語(ストーリー)をつくって、どのようにシーンを分けて、どうイラストを配置するのか、すべてを読者の感情の動きを想像しながら考えていくのです。自費出版における絵本作家は、作品全体をまとめる『プロデューサー』の役割もあります。

ご自身のSNSなどを同時に立ち上げておくことをオススメします。例えば、書店に並べたとしても、すぐに在庫の山が戻ってくるわけですから、それらは自分で販売できるような環境を作らなければいけません。宣伝するにはSNSを活用するのが良いでしょう。

それに(運よく)絵本作家として認知された場合にもユーザーとの接点を持つツールとしても使えます。次の作品つくりのアイデアをもらえたり、新作の宣伝活動にも有効です。その運用にあたっては、多少の知識は必要ですが、徐々に慣れていけば良いと思います。

さて、絵本の自費出版に関する相場や費用の目安、さらには選び方のポイントをご理解いただけたでしょうか?当方(玄武書房)でも絵本の出版を扱っていますが、しっかりとプロの視点からのアドバイスを行いながら、作品のクオリティ向上を目指しています。