絵本作家を目指している方たちにとって、作家デビューのチャンスというのは多くはありません。例えば、絵本コンテストなどでの倍率は200~400作品のうち、少なくとも『トップ3』以内に入らないといけません。そのコンテスト自体も年に1~2本くらいしかありません。
小さなコンテストの場合、単なる賞を決めるだけで商業出版が確約されるわけでもありません。そのような状況の中で【絵本作家デビュー】を夢見ているだけ終わらせてしまって良いのでしょうか。もっと積極的に自費出版という形で商業出版するという選択肢もあります。
今回は、絵本作家デビューを『自費出版でやってしまおう』という場合の注意点と【費用を抑えるポイント】などをまとめていきたいと思います。その自費出版の絵本で世間に認知されて、次回作は大手の出版社から直接依頼を受けるような流れになると最高ですね。
絵本作家として自費出版を検討するメリット
あなたが絵本作家になるために自費出版する事は「自分の作品や実力を売り込む」ためには最も有効な手段と言えるでしょう。なぜなら、あなたは現時点では『無名の絵本作家』ですから、その作品の評価や認知度はゼロだからです。
ここでは実際に自費出版した場合のメリットを考えてみたいと思います。絵本作家として世間から認知されるために必要なのは『商業出版の実績』しかありません。それは個人的に製本したような絵本では意味がなく、出版社から発刊された絵本である必要があります。
<賞に選ばれにくい作品でもOK>
現在の絵本コンテストの賞を獲得する作品の多くは「一般的に受けそうな整った作品」が多いように感じます。それは出版社側からすれば重要な点であることは間違いありません。またテーマ性も「一般受けしそうな作品」が多いのも特徴だと思います。
もしかしたら絵本作家を目指している皆さんからすれば、ありきたりの作品が受賞しているように感じることもあるかもしれません。個性の強い作品というのは選ばれにくいのは仕方がありません。パッと見で売りやすい絵本が選ばれやすいのです。
あなたの作品が特徴(絵本作家としての個性)がなければ、受賞しやすい「ありきたりの作品」と同じジャンルですから、それで賞を取れないということは「実力不足」だと言えるでしょう。オリジナル性が高い場合には、今ある絵本のコンテストでは選ばれにくい作品ということです。
そのような賞に選ばれにくい作品であっても自費出版であれば商業出版が可能となります。絵本作家としてデビューするチャンスを自ら作ることが重要です。自分の作品を世の中に出していくことは認知や知名度を高めていくきっかけになります。
<商業出版をした実績を得られる>
実際に自費出版の商業出版とそうでない出版に関しての違いはありません。絵本を商業出版したのであれば、あなたは『絵本作家』という肩書きを手にいることができます。本を売ってお金(印税)を得るということは、その道のプロということです。
当然ですが、絵本のクオリティを高めて出版する必要があります。正直、今そのままの原稿では難しいかもしれません。素人(プロの絵本作家ではない)の作品はほとんどの場合、プロ(編集担当など)の手直しを入れないといけないものが多いです。
ただ「絵本を出版している」というだけでは実績として認識されるのは難しいかもしれません。また作品のクオリティを高めることで読者からの支持も得られるでしょう。その支持(レビューや感想)は絵本作家としての実績につながっていきます。
<読者の評価や感想がもらえる>
絵本作家としての実績のひとつが「読者の評価」です。この評価があれば次の出版への売り込みに活用できるので、まさに自費出版をするメリットと言えるでしょう。あなたが絵本作家としての評価を持っていることは、当然ながら出版社側からしてみてもメリットです。
例えば、絵が独特な場合に「物語とイラストが合っている」という評価はプラス査定となり、ストーリーが独特な場合でも「独特な世界観が他にはなく魅力的だった」という評価であれば、読者に認められる絵本作家であることの証となります。
そして、読者の感想があれば次の作品に活かすことができます。このような意見もあったので、今回の作品に活かしましたという向上心は持ち込みされた出版社側にも魅力を感じるポイントです。つまり、自費出版であっても『第三者の評価』をもらえることが重要なのです。
<完成品で実力を判断してもらう>
通常の原稿の持ち込みと、出版された作品を(参考として)持ち込むのでは印象が異なります。実績のない絵本作家の場合の原稿は、まず「絵」を見て判断されます。少なくとも一定のレベルに達していないと、それだけで落とされるでしょう。
絵本作家の評価というのは「イラスト」だけではなく「物語」や「テーマ性」および「オリジナル性」も重要なわけですが、第一段階の「イラスト」のみで判断されるのは勿体ないです。しかし、現実問題として、その段階でふるいにかけられてしまう作品がほとんどです。
では過去に商業出版の実績があるという絵本作家であればどうでしょう。すでに第三者によって評価された作品があり、その人が持ち込んでくる原稿は気になるはずです。出版社の担当者は、まず過去に評価された(商業出版された)作品から目を通していくでしょう。
このようにチャンスが増えるのが『他者による評価』(実績)の存在です。絵本作家が自費出版することで得られるものが多いことが分かります。積極的に絵本作家を目指していくための手段としては検討の余地があるのではないでしょうか。
絵本の自費出版の費用について
絵本作家としてデビューするために自費出版を考えているなら、そのコストを知らなければいけません。あなたの現実として可能かどうかを判断していきましょう。また費用を知ることで、何が必要なものかも見えてくるため、あなたのリアル(可能な範囲)に合わせた自費出版を検討できます。
現状、一般的な『絵本の自費出版』の相場は【150万~250万円】くらいとされています。これは高額に見えるかもしれませんが、業界的には当然のような数字となります。その費用には『ハードカバー』と『場所買い』が含まれいるからです。
<見た目にこだわった絵本>
ハードカバーの絵本にするだけで、通常の書籍を製本するより『1.5~2倍』の費用が必要になります。絵本は既製の型がないため、すべての作品をオリジナルで作っていくことになります。手作業などの工程も多くなっていくので人件費や材料費がかさんでくるのです。
ただし、ここで考えてもらいたいことがあります。あなたの絵本のターゲットは誰でしょうか?もし乳幼児(乳飲み子)や1~2歳児であれば、丈夫なハードカバーの絵本が良いかもしれません。それ以外の年齢の子どもであれば、モノ(絵本)を大切にすることができる年頃です。
つまり、絵本のそのものの強度を考える必要がなく、一般的に考えがちな『絵本はハードカバーだ』という固定概念を捨てることができるのです。これがなくなれば、自費出版の費用も格段に安くなります。あなたの絵本のターゲットは誰かを考えてみてください。
あとで詳しくふれますが、絵本の自費出版の費用が高くなるということは、その販売価格にも影響を及ぼすということを認識してください。コストがあがれば価格もあがるというのは常識です。その価格にお金を出すのは誰でしょう。
<書店に並べたい場合>
絵本の自費出版で必要なコストとして『場所買い』も大きな割合を占めています。場所買いとは、書店に並べるためのスペースを確保する費用のことです。皆さん(自費出版)の絵本はスペースを購入して初めて書店に並べることができるのです。
この費用がかなり高額かつ店舗数によって倍増していくわけです。書店に並べたいと考えているなら必要な経費となります。自費出版の場合、必ず場所買いでしか書店では販売されません。どんなに面白いと担当者が褒めてくれていたとしても費用はかかります。
さらに重要なお知らせがあります。場所買いは【期間限定】なので、一定期間を過ぎたら店頭からは消えてなくなります。特に、絵本は売れにくいジャンルですから、ほとんどが在庫として戻ってくるでしょう。その在庫の処理は出版社によりますが、著者に所有権と処分の義務が生まれます。
実際には、絵本を書店に並べて売れ残りが著者の元に戻ってくる方が良いかもしれません。なかには著者に黙って、売れたふりして処分されることもあります。この「売れたふり」をする会社の目的は、次の作品も再び高額な自費出版をしてもらうことなので注意してください。
<オンデマンド出版>
これから絵本作家のデビューに向けて自費出版を考えているなら、この『オンデマンド出版』を活用していくことをオススメします。聞いたことがない方が多いと思いますので、簡単に説明すると「受注生産方式の出版」になります。
ネット販売が基本となりますが、受注生産=在庫の心配がありません。さらには在庫の概念がないわけですから、半永久的に「売り切れもない」わけです。読者が欲しいと思ったときに、いつでも購入できるのは最大のメリットです。その購入のチャンスを逃すこともありません。
もし、あなたが「ハードカバーの絵本にこだわる」のであれば利用できません。その作品のターゲットが何歳なのかを考えてみてください。ハードカバーという高額で無駄な費用をかける必要性はありますか?オンデマンド出版という新しい形の自費出版の方法があることを覚えておいてください。
他にも「電子書籍」という手段もありますが、やはり絵本はリアルな紙の本である方が良いでしょう。リアルにふれることで親しみを持って作品を見てもらえます。いわゆる『リアルへの愛着』が絵本にとって重要な感覚だと思います。
自費出版の費用を抑えることの最大のメリット
先に少しふれましたが、絵本の自費出版の費用を抑えることは「絵本作家の負担」を減らすのと同時に「読者(購入者)の負担」も減らすことができます。現在の絵本の相場は「1200円~1500円」という書籍としては高額な部類になります。
一般的に子ども向けの絵本(特にハードカバー)が高い理由はお伝えした通りですが、本来であれば誰でも気軽に楽しめるジャンルでなければいけないはずです。絵本作家が自費出版する際には、読者のために販売価格を抑えることを考えた方が良いでしょう。
例えば、ストーリーもイラストも100点の絵本があったとしましょう。その絵本が1500円よりも安い価格で購入できれば読者の満足度がさらに高くなります。結果的に、100点だった絵本が120点や150点の絵本へとなっていきます。
絵本作家として自費出版する場合、このように読者の視点がなければ結果がついてきません。なぜなら、読者の立場の絵本つくりができていない証拠だからです。自分よがりの作品つくりではなく、ぜひ読者を意識した絵本を完成させてください。
絵本作家として活躍するために・・・
絵本作家としてデビューして活躍したいという夢はかなり険しい道のりになることでしょう。それは、日本の絵本市場そのものが小さいが故の現象なので仕方がありません。少子化という話でもなく、これは言語の問題で「日本語の絵本」は世界的に売れることがないためです。
ひとつの手として「英語の絵本」に挑戦していくのも絵本作家で食べていく可能性が広がるように思います。あらゆる可能性を自分で狭めないことが重要になります。また現状において、世界で挑戦するためには『オンデマンド出版』でしか叶えられません。
英語の絵本はあくまでひとつの提案です。まずは絵本作家としての実績作りという点で、今考えている(手元にある)作品を商業出版するために行動してみてください。これまでお伝えした通り、絵本作家としての選択肢はいろいろありますので、自分に合ったものを選びましょう。
自費出版の絵本であっても、あなたを評価してもらえるチャンスです。その評価は読者のみならずプロ(出版社)の目にも留まりやすくなるでしょう。実際に行動したもの勝ちだと思います。何も動かなければ結果を得ることもできません。
【まとめ】絵本作家になるための自費出版について
自費出版から絵本作家を目指すプロセスはご理解いただけたでしょうか。簡単にまとめると「自費出版>読者の評価>出版社から評価」という流れが生まれます。これは絵本作家としての自信にもなり、今後の活動の幅も広げてくれるきっかけです。
たしかに自費出版は費用がかかりますが、それをどう活かしていくのかは【あなた次第】だということになります。また今回のように活用方法を知ることで、今後の行動力も変わってくるでしょう。知っているのに動けないのは、その夢が大したものではなかったということです。
本気で絵本作家として活躍したいのであれば、結果を出せるだけの行動をしていきましょう。また商業出版で感じた『共感力』を活かして、さらに良い作品を生み出してください。皆さんのオリジナリティあふれる新しい作品に出会えることを楽しみにしています。