絵本を個人出版する際の注意点【商業出版を理解することが大切】

これから絵本を個人出版したいと考えている方にとって、何から着手していくべきでしょうか?絵本のストーリーを考えたり、イラストを描いたりするのは当然ですが、それ以前に検討しておくことがあります。それは「どのような出版形態にするか」です。

ここで言う『個人出版』とは、一人の人が「絵本を出版すること」と定義しておきます。その出版方法には、本当に誰の手も借りずに一人で出版する方法と、いわゆる出版社を経由する方法が考えられます。どちらも一長一短ありますので、まずは基本的な出版についての知識も必要です。

誰の手も借りずに1人で出版する方法

<印刷所に依頼する>
印刷所には絵本の販売ルートなどはありませんが、個人出版の基本と言えます。例えば、ご自身のお店で販売したり、友達や知人などに配布したり、どこかの施設などに寄贈する場合には印刷所を使うことが多いです。印刷費用が必要なのと、自分で絵本をデータ化する必要があります。たまにサービス(費用は別途必要)としてデータ化までやってくれる印刷所もあります。

<MyISBNサービスを利用>
4,980円が必要ですが、個人出版を簡単に行えるサービス(https://myisbn.jp/)です。ただし、パソコンでの登録作業があるため、ネットに慣れていない人には難しく感じるでしょう。こちらは規定通りのデータを用意しなければいけないのでデータ化する知識が必要です。自分でデータ化をできないのであれば、誰かに依頼するしかありません。

<電子書籍でつくる>
正直、上記の「MyISBNサービス」よりは絵本の個人出版に合っているかなと思います。電子書籍はエンターテインメント系の書籍(絵本も含む)に向いています。リアルな紙の絵本にこだわらないのであれば、電子書籍という選択肢もありだと思います。こちらも規定に沿ったデータが必要なのでパソコンや根との知識は必須になります。

<出版社の利用について>
結果的に、最初から出版社に依頼しておいた方が良かったなんてこともあります。もちろん『自費出版』ということになるので費用は必要になりますが、それでもご自身のスキルによっては選択した方が良いかもしれません。それにプロの手を借りるわけですから、現時点で想定している作品(絵本)よりは良いものに仕上がるでしょう。

絵本の個人出版をどのように行うのか?

絵本を自分一人で作ってしまうこともできますし、出版社などの業者を利用して『製本』や『商業出版』することも可能です。どのような出版を行うか、そのメリットやデメリットをまとめてみたいと思います。あなたに合った方法を検討してください。

<誰の手も借りずに1人で出版するメリット>

・少ない費用で絵本を出版できる
印刷所で製本する場合でも出版社に依頼するよりは安くなります。それは編集や営業関連の費用が不要になるからです。ただ製本して「絵本の形にしたい」のであれば印刷所で十分でしょう。また既存の販売サイトであるAmazon、もしくは個人やりとりのできるメルカリやBASEなどを使って販売しても問題ありません。ただ購入されるかどうかはまた別の話になります。

・好き勝手に自由な作品を作れる
もし出版社を通じて出版する際には、著作権(特にキャラクターの版権や各種商標登録)に関わるチェックなどが少なからず行われるため、絵本の出版自体ができない場合もあります。個人での出版であれば、著作権の問題は「個人の問題(責任)」なので、基本的にはどんな作品でも出版は可能です。ただし、版権元から訴えられるリスクはあります。個人の作った絵本であっても、それを販売や宣伝材料に使えば著作権の侵害となってしまいます。

<誰の手も借りずに1人で出版するデメリット>

・販売ルートがない
先ほどの「MyISBN」や「電子書籍」であれば販売ルートはあります。それ以外の場合、一般的に書籍を販売するルートがありません。例えば、メルカリや個人のグッズ販売アプリなどを活用していくことになります。ただし、一般的なルートでないため『素人の作品』や『趣味の作品』として認識されてしまうのは仕方がないと思います。

・クオリティが低い作品になる
実際に一人で作られた絵本は品質が低いものが多いです。自分では満足できる作品だとしても、プロの視点から見ると穴ばかりです。もちろん、購入者(読者)もそれには気づくことが多く、マイナスの評価となってしまいます。最低限の「絵本(作品)」として成立させるためには独学の難しさを感じることでしょう。

・在庫の処理などの問題がある
こちらも「MyISBN」や「電子書籍」であれば在庫の心配はありません。実際にリアルな書籍を自己出版した方たちが、その在庫に悩まされている現状を目の当たりにしてきました。個人出版で2000冊の絵本を作って、たった50冊しか売れておらす、大量の在庫が部屋の片隅においやられているという状況もあるようです。ご家族からも冷たい視線で見られることが多いです。

<自費出版|出版社を利用するメリット>

・クオリティの向上
プロの視点から絵本のクオリティを高めるためのアドバイス(指導)を受けることができます。これは後ほど詳しくお伝えしていきたいと思います。自費出版の会社によっては、ただ持ち込まれた原稿をそのまま製本して発売するだけのところもあります。あなたが「どのような絵本を作りたいか」によって、出版社または印刷会社を選んでいく必要があるということです。

・出版の知識がいらない
はじめての出版となれば、何をどうすればよいのか、手探りの状態からスタートすることになります。出版社であればゼロからスタートできるので、絵本を完成させるまでの無駄な悩みがありません。絵本の基本的な構成から、読者的な視点を考慮した絵本つくりを行えるでしょう。また販売後のケアも出版社が行うので、著者は結果(販売)報告を受け取るだけになります。ただし発生した印税の金額によっては確定申告なども必要になる場合があります。

・宣伝の方法について
基本的に無名の新人作家の場合、出版社を通じた自費出版であっても宣伝が大々的にされることはありません。それでも出版社が行うプレスリリースや一般的な絵本の販売ルート(チャンネル)での告知が行われるため、最低限の宣伝や告知状態を保つことができます。それが本当の個人出版となれば、そのルートに乗せる方法などから調べて登録などをしていかなければいけません。もし個人的にフォロワーの多いSNSなどをお持ちであれば宣伝も比較的簡単にできると思います。

<自費出版|出版社を利用するデメリット>

・高額な費用が必要な場合が多い
一般的な絵本の自費出版の相場と言えば【150~200万円】くらいと言われています。それはハードカバーにする費用がかさんでしまうのと、書店に並べる(場所買い)の費用がほとんどです。しかし考え方を変えることで無駄な費用を抑えることが可能になります。並製本(ハードカバーではない)にして、ネット書店でのみ販売するというような手法が有効です。

・著作権の問題を気にする必要がある
絵本の個人出版で「出版社」や「印刷所」を通じて出版する場合、著作権の問題をクリアにする必要があります。各種著作権に抵触するものは、そもそも「出版できないもの」となってしまいます。契約書にも著作権がクリアであるものしか出版できないとなっているはずなので、その契約を破った場合には著者にすべての責任が降りかかります。他人の著作物(文章や絵など)を侵害しないように十分に注意してください。

・その会社(業者)を信頼できるかどうか
個人出版の絵本はクオリティが低いのが一般的ですが、それはプロの目線で作られていないためであり、そのプロの視点とは『読者からの視点』とも言えます。いわゆる著者の独りよがりの作品とならないためには第三者の意見(アドバイス)が必須であり、それによるブラッシュアップを行う必要があります。そのようなアドバイスをもらえる会社を選んでいきましょう。作品の品質を高めるためにプロを利用するのが効率の良い絵本つくりにつながります。

絵本を個人出版する目的とは?

さて、あなたは一体「何のために絵本を個人出版したい」と思ったのでしょうか?ただ「作品を残したい」のであれば、製本すればよいだけです。製本と出版は別物ですから、それに関わる費用も大きく異なりますので、あなた自身の目的を明確にしておくことをオススメします。

「ただ作品として形にしたい」
これは先に述べたように『製本』で十分に思います。製本であればハードカバーであっても【20万円】くらいから絵本を作れると思います。近所の印刷所などに相談してみてください。最低限の絵本としての形にはなりますので、目的となる「形として残す」という点においては問題ないと思います。この場合には著作権なども気にせずに好き勝手な作品をつくれます。

「家族や知人に配りたい」
個人出版だからと言って、販売目的ではない絵本であっても著作権などには注意が必要です。その知識がなく心配な場合にはプロ(出版社など)を経由する方が安心かなと思います。出版社経由で行うメリットは先にお伝えした通りで、「ちゃんとした絵本」という認知を得られます。それは寄贈された側にとってもより満足が高まると思います。絵本のターゲットとなる子どもたちがいる施設への寄贈なども同様です。

「一般の読者に読んでもらいたい」
いわゆる『商業出版』になりますので、独りよがりの絵本を販売するのはやめましょう。個人出版としてメルカリや個人販売アプリなどで販売する場合、その購入者が『素人の作品』であることを理解して購入するわけですから基本的には問題ありません。ちゃんとした商業出版を目指すのであれば、プロの視点を活用した「販売するに値する絵本」を作っていくべきでしょう。

最低限のアドバイスをもらおう!

絵本を個人出版する場合、仮にすべてを自分一人で行うとしても「家族や友達」の意見を聞いてみるのが良いでしょう。基本的には「本当のクオリティがどうであれ」否定的な意見は少ないと思います。そのなかでも「より良くしたいから何か気づいたことやアドバイスはない?」と聞いてみてください。絵本のプロでなくても、読者としての意見が聞けるのは重要です。

もちろん、自分一人で作り上げて形にするだけなら「単なる個人出版」ですから、ご自身の好きなものを作ってしまっても良いと思います。それは『自己満足の世界』であるべきです。好きなものを自由に作り上げることの楽しさを満喫できるでしょう。

面白い絵本のひとつに「著者の個性を感じられる作品」というものがあります。ありきたりの「どこかで見たことがある」絵本よりも、あなたらしさが滲み出る物語を目指してみましょう。読者が感じる新しい何かがあれば、その評価も高まると思います。個人出版であっても、より読者の心を動かせるような絵本になれば最高ですね。

プロ目線からのアドバイス

もし絵本を商業出版とするなら「プロ」の協力は必須だと思います。このプロのアドバイスは絵本(昨区品)のクオリティを確実にアップさせてくれるものになります。ごく稀に、生まれ持ったセンスのある方の作品は、多少の手直し(アドバイス)のみで出版までたどり着くこともあります。それは本当に稀なことなので、あまり自信過剰にならないようにしてください。

何よりアドバイスをもらえるということは、その作品に『伸びしろ』があるということです。自分の実力不足に悩んだり落ち込んだりすることなく、その絵本がより成長する過程を楽しんでください。ちょっとした助言が作品を大きく左右することも多々あります。きっと「目から鱗が落ちる」という現状を何度も感じることになるでしょう。

例えば、絵本にはターゲットに応じた文字数があります。他にも読者の目線の流れに沿った文字やイラストの配置も必要です。年齢によっては言葉遣い(使う感じや表現など)も考える必要があります。さらには評価の高い絵本に欠かせないのは「大人が読んでも共感できる」という視点も必要です。このようなことを意識したことがないのであれば、現時点での「あなたの絵本」は商業出版のレベルにはないのかもしれません。

絵本を個人出版する際の注意点まとめ

さて、今回の記事によって選択肢が見えてきたのではないでしょうか?絵本の個人出版は「何も考えずに」手軽にできる場合もあれば、ちゃんと計画性をもって挑む場合もあるということです。やはり『絵本を出版する目的』を明確にすべきでしょう。

また面白い絵本を作りたいのであれば、あなたの個性を理解してくれる仲間(家族や知人・出版社や印刷所など)を見つけることも大切ということです。また彼らからのアドバイスをもらえることも必須です。個人出版だとしても作品のクオリティを高めるという作業を怠ってはいけません。

まだ見ぬ読者の心を動かすような作品作りを目指してください。それは読者にとっても著者(あなた)にとっても必ずプラスになります。さらには新しい作品つくりにも活かせることができるので、今後の創作活動にも大きく影響してくると思います。

絵本という小さな市場においての個人出版は大変な面も多いですが、その分、達成感や満足感も高いものになります。少なくとも本人が満足できる作品に仕上げてください。その自信と満足感があれば、周りの視線も気になることはありません。もちろん、家族などには事前に相談くらいはしておく方がより安心できますのでオススメします。